平成20年度報告







調査場所 伊勢市東大淀町351 東大淀小学校
調査日 7月2日
調査樹種 クスノキ
担当樹木医 浦口良太、中村昌幸
依頼内容 クスノキの樹勢が弱まり、枯れ枝が目立ってきたため、今後どう対処したらよいか。
調査・診断結果 クスノキの樹齢は95年と伝えられており、上向きに開口した空洞が確認されたが現状では樹勢衰退に大きな要因は考えられなかった。が今後の樹勢衰退によっては腐朽、空洞化が進行するのも考えられる。運動場の改修工事が行われた際、根元に盛り土、転圧がされたのことである。土壌表面は踏圧とセメントによって固結しており、土壌のPHはアルカリ性に傾いた。クスノキは弱酸性の土壌を好むため樹勢衰退の一因となっている。
これらのことから、枯れ枝の除去、衰弱枝の落下防止のための剪定、樹冠下の土壌改良などの指導を行った。
 
 


調査場所 伊賀市馬場 河合小学校
調査日 7月15日
調査樹種 センダン
担当樹木医 森田由一、児玉重信
依頼内容 急に樹勢衰退した気がし、今後日常管理をどのようにしたらよいか。
調査・診断結果 センダンの樹勢は特に異常がなく、南側にある樹冠下の下段は樹勢回復のため過去に樹木医の指導の元設置したもので、化成肥料等の効果によって旺盛な成長が確認された。が、その反面別の大枝切断不良によって樹幹部の腐朽が確認された。





調査場所 度会郡大紀町崎 大平つつじ山
調査日 7月23日
調査樹種 ツツジ
担当樹木医 坂口卓也、浦口良太
依頼内容 ツツジの剪定方法、ウメノキゴケの対処方法とつつじ山の適切な管理方法を指導してほしい。
調査・診断結果 ヤマツツジの枝先を調査するとウメノキゴケの繁茂が確認された。繁茂が多いヤマツツジは樹幹の1/4~1/2が枯死しているものも確認された。 枯死部の多いヤマツツジにおいても地際からの萌芽枝叢生も見られる。大平山はヤマツツジが自生していたようで、元々痩せ地であったと思われ、急傾斜地と長期間の雨量の多い土地柄から表土が流亡し、痩せ山化がさらに進んだものと推測された。
調査より土壌改良、同時に地際部の土壌の流亡防止対策、地衣類が多く繁茂し、ツツジ葉の着生が見られない幹は切除し、萌芽枝を伸ばすなどの指導をした。





調査場所 四日市市江村町 蓮行寺
調査日 9月11日
調査樹種 ラカンマキ
担当樹木医 坂口卓也、鈴木耕作
依頼内容 ラカンマキの枝が数ヶ所で枯れ、芽吹きも悪く樹勢衰退しているように感じられる。今後どうしたらよいか。
調査・診断結果 推定樹齢700年生のラカンマキは樹高7m、胸高部の幹周180pである。幹の北側で高さ約2mから地際部まで腐朽し空洞化している。また、枝数は老木せいか7〜8本と少ないが、高さ約2mの幹から東側と南側方向に力枝が約4mの長さに伸びている。東側方向の枝は活力がなく枯死も予想された。幹の空洞化は住職の本宅玄関側にある。幹の高さ約2mに着いていた枝が人の出入り等の妨げになり、支障枝で除去されたところから腐朽が確認された。  支柱は鉄製で2ケ所に行われているが、設置当初のままであるからマキの生長に伴い、幹に巻き込み傷も確認された。根を調査すると根が表層部に多く下層部に少ないのは、下層部の土壌が酸素不足等の不良条件から起きていた。本樹種の衰退は土中条件に問題があると判断した。
調査より、樹冠下の土壌が固結しないように、人の立入り・車の駐車禁止の防止柵を設置、土壌改良、支柱のやり直し、老木のため弱めの剪定などの指導をした。





調査場所 四日市市立常盤西小学校校林
調査日 9月25日
調査樹種 学校林の樹種
担当樹木医 中村昌幸、浦口良太
依頼内容 学校林の整備に関して伐採木の選定、判定できない樹木の樹種名を確認する調査依頼
調査・診断結果 校内の南西側に位置し北斜面を中心とした里山で、子供たちの学習の場として、休み時間や放課後の遊び場として、さらには地域の人々の憩いの場として活用されている。PTA活動などで整備されているため樹木は本数的に過密化しているわけではないが、全体に生長したことにより樹高が一律に高くなり(単層林)、光が入りづらくなっていると思われる。その中でも特に常緑樹の樹冠拡大は大きな原因と考えられた。伐採木の選定として倒れる危険のある枯死木や衰弱したもの、部分的に過密になっている樹木、かぶれる危険のあるウルシ類、樹幹が光をさえぎっている常緑樹、虫害の著しい樹木にマーキングをした。
調査より倒木の危険のある樹木の伐採、梅の収穫を望む場合は日当たりをよくするよう周辺の樹木を剪定もしくは伐採し、同時に梅が実り、容易に収穫できる様にコンパクトな樹形に剪定、樹木の伐採は直ちに行わなくてはならない危機的な状況ではないが、部分的に過密状態になって衰退している樹木が確認された。出来る範囲でマーキングに沿って伐採などの指導をした。





調査場所 伊賀市猿野
調査日 10月4日
調査樹種 サクラ類
担当樹木医 森田由一、児玉重信
依頼内容 樹勢衰退の原因究明、樹勢回復を行うにあたって技術的留意点の助言をお願いしたい。
調査・診断結果 対象木は地域の景観向上等を目的に、主に道路並木として地域住民らの手によって植栽されたサクラ(主にソメイヨシノ)である。診断、治療の履歴はなく、専門的な樹勢診断は今回が初めてとのことである。不適切な剪定方法による癒合阻害、肥大成長及び生殖成長の衰退、不適切な剪定による腐朽菌等の進入による腐朽除草剤散布による雑草枯死による土壌の固結化の伴う土壌の通気不良。入念すぎる除草や本来雑草が持つ土壌耕転作用の排除による土壌の固結に伴う土壌の通気不良、植栽間隔が過密であることによる通風不良(テングス病の大きな要因)、植栽間隔が過密であることによる成長阻害、てんぐ巣病の発生枝も確認された。
診断よりてんぐ巣病の枝の撤去、草刈り機による地際部への傷害が確認されたので手での草刈りが望ましいと考えられ指導した。





調査場所 志摩市磯部町追間
調査日 11月1日
調査樹種 ナギ
担当樹木医 浦口良太、中村昌幸
依頼内容 樹木の幹や枝にカイガラムシの被害を受け枯れ枝が目立つようになった。また幹に傷穴が複数あるがどうしたらよいか。
調査・診断結果 冠上部東側には枯枝が多く見られ、ウメノキゴケも着生している。カイガラムシ(ツノロウムシ)が付着し被害を受けている枝が多く、枝枯れの要因のひとつであると考えられた。幹下部には木部が露出した傷がいくつかあり、樹皮の巻き込みは進んでいるが内部は腐朽が進行しているようであった。東側と南側は平坦に整地された自動車も乗り入れることのできる広場であり土壌表面は固結していた。
調査よりカイガラムシの被害の多い枝の撤去・消毒、固結した根元周辺の土壌改良などの指導をした。





調査場所 志摩市磯部町坂崎
調査日 11月1日
調査樹種 クスノキ
担当樹木医 坂口卓也、浦口良太
依頼内容 クスノキの幹の根元に空洞があるが、土を入れるなど何らかの処置は必要か。現在のクスノキの樹勢及び周辺の環境は良好であるかどうか。
調査・診断結果  樹冠上部に多少の枯枝は見られるが、葉は量、色、大きさとも老木としては問題なく、小枝の伸張も良好といえた。幹、太枝にはいくつかの大枝切断痕がある。建物への枝の接触や強風による枝折れにより切断除去されたようであった。幹下部の西側には地際に開口部があり、根株下方向には地面から1m以上の深さまで内部は空洞となっているが樹勢はおおむね良好であった。
調査より樹冠上部にある枯枝の撤去、根元の空洞化は現時点では通気・排気性とも良好な状態であったので、何かで埋めると逆効果になると考えられるため放置し、根株内に雨水などが流れ込まないような工夫などの指導をした。





調査場所 度会郡大紀町野原 野原祖霊社
調査日 11月13日
調査樹種 ゴヨウマツ
担当樹木医 浦口良太、大石浩
依頼内容 野原祖霊社敷地内のゴヨウマツが冬季になり急に変色した葉が増えたがどうしたらよいか。
調査・診断結果 樹冠全体で旧葉の黄変が著しく、中には当年葉全体が黄変している枝も相当数みられた。今回の葉枯れは、秋に枯葉が落葉する時の症状に近いものと思われた。ゴヨウマツもクロマツ、アカマツ同様にマツ材線虫病の検査も行ったがマツノザイセンチュウは発見されなかった。ゴヨウマツが生育する祖霊社敷地内の土壌についても、表土は長年の参拝者の踏圧害により固結状態にあり、スコップでは簡単に掘れない状況になっていた。
調査より樹木の消毒、土壌改良の指導をした。





調査場所 津市西丸之内 お城公園
調査日 1月19日
調査樹種 公園内樹木
担当樹木医 坂口卓也、児玉重信
依頼内容 昨年に引き続き、お城西公園の整備計画に基づき、多目的利用を目指し開放感のある・緑豊かな公園、樹木観察と憩いのある広場の整備のための樹木診断と間伐を指導してもらいたい。
調査・診断結果 昨年度は、公園の各ゾーンとも高木に花木類が被圧され、樹形が変形して萎縮したようになっていたので、高木の伐採を提案した。 今回は、前年に伐採が不十分であった高木の伐採と、景観整備のため花木類の整枝剪定を提案した。
高木の伐採という対策を講じたので、花木類は被圧から解放され、枝条の伸長が旺盛になると思われる。まだ数年間の余裕はあるものの、目標とする公園に近づけるためは、きめ細かい手入れが必要、道路に沿って市役所庁舎用の高圧電線が通っており、樹木の伸長・枝条の拡張により、台風時、強風時に電線との接触事故の恐れがあり、常時注意が必要、植栽されているサクラについては、施肥が必要。ツツジ、サツキは適宜施肥を行うとともに、剪定をおこない、コンパクトに仕上げる、コブシは樹勢衰退が進んでおり、施肥などの樹勢回復策が必要、サルスベリは断幹することにより、萌芽枝が多数発生するので、樹形をみながら枝が散開するように剪定、ヒマラヤスギの幹の湾曲は直らず、本来の樹形には戻らない。倒れないように支柱を設置して、様子をみるなどの指導をした。





調査場所 度会郡大紀町野原 野原祖霊社
調査日 1月24日
調査樹種 ゴヨウマツ
担当樹木医 坂口卓也、浦口良太
依頼内容 祖霊社と野原神社を分断して通る県道「伊勢大宮線」沿いの石垣に、導水路から祖霊社敷地のレベルまで揚水された水の漏水が顕著になってきており、石垣を積み上げて盛り上がった状態になっているゴヨウマツが生育する土壌内部へ流れ込んでいる恐れがあり、ゴヨウマツ根系に対する影響が心配であり、根元周辺の土壌調査の必要性があるものと思われるがどうしたらよいか。
調査・診断結果 ゴヨウマツ地際部周辺の3箇所において土壌調査を実施した。この結果によると、30年ほど前のサイホン敷設時の造成に際し、ゴヨウマツ周辺の土壌に攪拌・盛り土などの影響により、3箇所とも土壌断面層位はまちまちです。赤色土で盛り土された地層は、玉石防護域の外側のサイホン近くが約4050cm程度でもっとも厚く、県道から祖霊社敷地に入る階段近くで本来の地盤高に接する勾配となっているものと推定される。地表面近くの赤色度は、元来痩せた土壌であるうえ、踏圧により固結状態にあった。サイホンからの漏水は表層部に影響しているだけでなく、最下層の土壌にグライ化が進行して土壌掘取り時の下層土壌は礫質混じりの粘土質土壌で、握りしめた状態では過湿状態で土塊は団子状で、土色はやや灰白色であった。ゴヨウマツには土壌水分も大切であるが、根系の土壌空気要求度はそれよりはるかに大きく、このまま放置して下層土壌のグライ化が進むことになれば、ゴヨウマツは衰退し続け、枯死に至る恐れがあると考えられた。
調査よりヨウマツ周辺の土壌を過湿状態にしているサイホンの改修が必要です。このまま今後も漏水が続けばゴヨウマツの樹勢衰退はますます進行し、枯死に至る恐れもある。 来るだけ早期にゴヨウマツ周辺の土壌改良、消毒などの指導をした。





調査場所 亀山市加太板屋 川俣神社
調査日 2月3日
調査樹種 シダレザクラ
担当樹木医 児玉重信、小池勇
依頼内容 枝に付着した苔、枝枯れ等により樹勢の衰退が感じられることから、この原因究明と対応策について今後どうしたらよいか。
調査・診断結果 当樹木の枝枯れは、樹冠内部の上層の枝で、太さ8〜10p程度のものが数本確認された。この枯れ枝には木材腐朽性であるカワラタケ類の子実体が発生している。キノコ発生の状況から枝枯れは、10年ぐらい前から繰り返し起きていたと予想される。幹には薄黄緑色のコケ類が付着している。コケ類の発生は湿度に関係し、過湿の条件はサクラの生育適地ではないが、コケ類の付着は樹木の衰退に直接関係はないとされているものの、肥大成長の低下が見て取れる。 当樹木の生育地は、南側の石垣と西側の石段に2方向囲まれて狭く、根の成長できる場所は制約されるものの北側の広く空いた所に太い側根が伸長しており問題はない。また、社殿の地表面はわずかに高い所に在って四方に緩く傾斜し、雨水等が滞水する所は見られなかった。なお、当樹木周辺の土壌を掘り、根系状況を調べた結果、根は表層近くに多く見られることから何ら問題はない。また、土壌は花崗岩を母材とした地山の砂質土で、踏圧害のない軟らかい土壌で透水性は良い。 当樹木の枝枯れの原因は、隣接木のスギとイヌマキ等と南及び南西側境内林の影響による被圧害が考えられた。イヌマキは地際部から枝葉を繁らせて旺盛に生長して、当樹木に覆い被さっていた。また、境内林(スギ・カシ類・タブノキ)は南及び南西側に位置し樹高は高く、陽光の当たる条件を大きく阻害していると思われる。一般的に被圧害は日照不足による一種の生理障害であるが、この原因から枯死被害の発生は多く見られる。さらに、境内は日当たりが悪く、風の通りも良くないことから、降雨の後など乾きが遅く湿潤な状態になると思われる。サクラ類は日照・乾燥を好むことから、このような所はサクラにとって良い環境ではなく、早期に周辺樹木の除伐等による環境整備が必要であった。
これらより枯枝の撤去、被圧害を及ぼしている樹木の剪定、伐採、隣のソメイヨシノのてんぐ巣病の枝の撤去などの指導をした。





調査場所 鈴鹿市白子町 唯信寺
調査日 2月26日
調査樹種 クロマツ
担当樹木医 浦口良太、中村昌幸
依頼内容 クロマツの健康状態および剪定を行う際、どのようなことに注意したらよいか。
調査・診断結果 立地条件は墓地内の砂質土壌にあり日当たりも良く良好な環境にあり、葉量は十分にあり葉色も良く健全な状態にあった。特に病害虫は見受けられなかったが南側の根元にコブらしきものがあり徐々に成長しているように見受けられた。この原因については不明だが今すぐに樹勢に影響を及ぼすものとは見受けられなかった。コブに関しては原因の特定、治療および除去が困難なことから樹勢が衰えない管理をしていくことが一番良いと考えられた。剪定については樹勢を大きく衰えさせるような強剪定は避けたほうが良い。また風を受け易い枝はこの機会に落としたほうが台風などの被害を避けるためにも必要と考えられた。
これらのことより、
葉量は3分の1程度除去、樹形は台形にする、風の影響を受け難くかつ健全な葉量を保つためには樹幹近くに葉のついた枝を保つこと、特に樹冠部分の剪定にあたり大きな枝をきる場合は切り口に防腐処理をする事などの指導をした。





調査場所 志摩市磯部町桧山
調査日 3月5日
調査樹種 クロマツ
担当樹木医 浦口良太、中村昌幸
依頼内容 クロマツの幹の樹皮が剥がれて内部が枯れているように見える。樹皮が剥がれた原因は何か、また今後どうしたらよいか。
調査・診断結果 クロマツは、剪定されていることを考えて、葉の量・色、枝の伸張状態ともに良好であった。幹は、調査依頼の内容にあるように根元から地上1.8m程度の手の届く高さまで数箇所の樹皮の剥がれが確認された。特に北東側は損傷が激しく地際から高1.6m、幅90cmにわたって木質部が露出し、腐朽が進行していた。露出した木質部には斜め下方向に開けられた無数の穴がありマツ枯れ防止剤の注入痕であることがわかった。他の部分でも薬剤注入痕から縦に幹割れをおこしている状態が数多く見られ、樹皮の剥がれの原因は薬剤樹幹注入時の形成層への液漏れから起こった樹皮細胞の壊死であると考えられた。幹を打診したところ、外樹皮が残っている部分でも内部木質部と分離している箇所が数箇所あり、外観以上に内部の腐朽が進んでいると考えられた。一部には腐朽菌の子実体も発生、内部の腐朽も進行しているようであり、幹の折損・倒木の可能性もあると考えられた。
これらのことより、幹内部の腐朽の状態によっては腐朽部からの折損・倒木の可能性は高い。人や建物への被害防止のためにワイヤー支柱などによる倒木防止措置が必要である。損傷部は現状のままでは腐朽が進行するだけで、今後は樹勢の衰退・枯損の原因にもなりうる。樹木医など専門家による腐朽抑制措置、及び樹皮の巻き込み成長を促進し幹の自立強度を高める措置、マツ材線虫病に対しても無防備状態になっているため、防除などの指導をした。





調査場所 いなべ市北勢町西貝野 勝泉寺
調査日 4月9日
調査樹種 シダレザクラ
担当樹木医 浦口良太、児玉重信
依頼内容 木のしだれ桜が、この近年(約5年程前)花の咲き具合が悪くなってきているように感じられ今後どうしたらよいか。
調査・診断結果 古木であることと樹高が高いため、上部の葉は蒸散に伴う水の補給が間に合わず水不足が起こる、さらに風当たりが影響し水ストレスで成長が低下していた。花芽あたりの着花数を調査しようとしたが、花が散っていたが花柄が残っていたので花柄数を調べた。花柄数は4本が多く、次いで3本で稀に5本も見られた。1つの花芽から着花数の4花は一般的にいわれる健全木の着花数である。幹の損傷、枝枯れは樹冠下方のふところ枝の小枝に数本みられたが、日当たり不足から起きたものと思われた。また、梢に近い枝の3本に枝枯れが見られた。太さ10cmぐらいで最近枯れたものでなく、かなり古い枝枯れであった。本堂の屋根とほぼ同じ高さの所であり、建物に枝が当たるなどの理由から枝おろしされたと予想される。不適当な枝おろしの痕跡のように思われた。この枝枯れ以外は主幹および太い枝に問題点は見られなかった。樹齢350年以上の古木では太い枝の損傷、損傷が原因で起る幹の腐朽など問題点が多くあるのが一般的で、当樹木は幹および枝に損傷が余りなく大変珍しい。当樹木の着花不具合が、夏季の異常高温化が影響している場合には、水ストレスから梢付近の葉は巻くか、さらに被害が酷くなると早期落葉が発生することが考えられる。一方、冬季の高温化は、開花期が早まって長い期間に亘り開花はダラダラ咲きするため、着花量が余り目立たなく少なく感じることがある。今後温暖化の影響は、いろんな樹木に問題が発生すると思われる。特に、古木は抵抗力が小さく問題が起り易いと考えられるため、注意深く見守っていく必要がある。
これらより、毎年、同じ枝で、枝一定の長さ当たりの花芽数、花芽当たり花数、枝と枝間の伸長量を調査、夏季高温時期に梢付近の葉に葉巻き被害はないか、また、落葉の有無を観察する などの指導をした。





調査場所 度会郡大紀町野原 旧七保小学校跡
調査日 4月27日
調査樹種 オハツキイチョウ
担当樹木医 玉野隆、石黒秀明
依頼内容 最頂部付近の枝に枯損がみられるので、樹木の健康診断をお願いしたい。
調査・診断結果 12年ほど前に干ばつにより葉全体が褐変したため、地元住民の判断によりイチョウの太枝が全体的に深く伐採された。それ以来、枝葉の伸長は極端に悪くなった。幹上部で伐採された幹での腐朽の進行も考えられ、その影響などから矮小化や早期落葉となる枝葉も出始めていた。東、北、南側の果実(ギンナン)も小粒化していた。オハツキイチョウの西側区域には砂場などがあり、比較的膨軟な土壌となっており、枝の伸長も旺盛であった。一方、北側、東側の土壌は、度重なる盛り土と踏圧により、堅く締まった状態となっていた。上層部の固結した土壌の山中式硬度計の計測値は30以上となっている。この数値は根系の伸長を許さない硬度であり、イチョウの根系も皆無であった。土壌調査の結果、盛り土は5層(約18cm)の厚みとなっている。盛り土層の下部には元々の根系の伸長が見られたが、一部腐朽していた。深さ約60〜80cmには、砂利層が拡がっている。締め固まった土壌は、通水、通気性が悪く、根系の進出室も許さず、土壌表面全体に固結層を形成していた。固結した表層土壌と最下部の砂利層とに挟まれた有効土層(根系の拡がる厚み)は薄く、今後も干ばつの被害を受けやすい状況が続くことが考えられるここ数年で急速に衰弱することはないと考えられるが、土壌表層の改良は必要である。幹の一部に表皮の剥がれた部分があるが腐朽の進行は見られず、これがもとで倒壊する可能性は低いと考えられた。地際部の根上がり部分に腐朽が見られるため、対策が必要かと思われた。イチョウの近くにモウソウチクが繁茂しており、タケの地下茎がイチョウ根圏に侵入している可能性があるので、モウソウチクの間引き、駆除対策を行う必要がある。
これらのことより、 通気性、通水性、保水性改善のため固結した表層土壌層の破壊、エアレーションを行うとともに、有機物の混入などにより表層土壌の改良のどの指導をした。





   
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